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機能的脳神経外科とは? [機能的脳神経外科]

機能的脳神経外科という分野があります。これは何らかの病気により起こってくる症状、例えば、脳卒中•中枢神経の変性疾患や脊髄損傷後の四肢の疼痛や痙縮(痙性麻痺)、パーキンソン病による歩行障害•振戦•固縮など、原疾患の治療は困難であるが症状軽減を目的にし、脳•脊髄•末梢神経に対して外科的処置を加え症状を回復、改善させようという診療分野です。現在、痙縮とそれに伴う痛みに対してITB療法(髄腔内バクロフェン投与療法)、慢性疼痛患者に対してはSCS(脊髄刺激療法)、眼瞼けいれんや痙性斜痙に対してはボトックス療法(ボツリヌス毒素)、また歩行障害•認知症•尿失禁を3主徴とする特発性正常圧水頭症に対してはLPシャント(腰椎−腹腔シャント術)などを行っています。また、当院では深部脳刺激療法(DBS;deep brain stimulation)を行うための装置があります。DBSとは定位脳手術と呼ばれる治療法の一つです。定位脳手術は1947年からの長い歴史がある治療ですが、このDBSはその方法論に基づいて行うものであり振戦に対して2000年4月に保険適応となった比較的新しい治療法です。方法は頭蓋骨に固定したフレームと脳深部の治療目標点の位置関係を三次元的に解析し、その目標点に正確にアプローチする手術方法です。この方法を用いて脳深部の目標点(視床、視床下核、淡蒼球など)に電気で刺激する電極と前胸部に刺激装置を埋め込み、接続し、電気刺激を行います。電気刺激は体外からプログラマーという装置を用いて刺激部位•頻度•電圧•幅が調節できます。薬のみでは十分な改善が得られないパーキンソン病、本態性振戦、ジストニアなどの不随意運動が治療の対象になります。現在のパーキンソン病の治療は薬物療法が基本です。しかし薬物療法を行ってもコントロールが困難な振戦がある場合や薬の副作用で精神症状、消化器症状が強くでる場合や薬を投与しても日内変動やジスキネジアがコントロールできない場合が手術適応となります。術後は薬剤量を減らすことができ、オフ時間の短縮、日内変動の改善、振戦、無動、固縮、歩行障害の改善が得られます。しかしながら、病気そのものを治癒させるものではなく、あくまでも症状の改善を目的に行う手術ですので、薬物療法との併用、刺激条件の調節を継続的に行う必要があります。従って、実際どの時点で手術を受けるのが良いのかは患者ごとに異なりますので、主治医の先生と相談して決める必要があります。こういった、患者の日常生活を改善させる機能回復を目的にした治療分野があることを患者だけでなく、医療従事者にも知っていただき、治療の選択肢の一つとして認識されることを願っています。

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